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「クロスエアタワー」等、人工環境創造プロジェクトは成功するのか?

マンション計画であれば地盤補強やピットの設置、遊水池等、建物を保全するための人工環境は多かれ少なかれ組込まれている。しかし、大きな遊水池に蓋掛けして建設したり、高速のジャンクション上に空中庭園を創造する大規模な人工環境創造プロジェクトもある。

■事例1:2005年に発売された「京急シティLウィング」(376戸)は、横浜市営地下鉄上永谷駅前の遊水池(かつてはゴルフ練習場だった)の上に建つ16階建て2棟のプロジェクト。発売当初は売主も懸念したが、遊水池であり常時水は入っていないし、基礎杭は別構造。駅まで歩道橋で直結徒歩1分。地盤はむしろ海岸物件や埋立地よりは良いとの評判で2006年には完売した。

■事例2:東京都・東急不動産・東急電鉄・三井不動産RE・有楽土地5社のJVで2011年2月に登場した「クロスエアタワー」は、目黒区最大、全689戸、42階建のタワーレジデンス。自治体も巻き込んだ第二種市街地再開発事業である。建設地はかねてより渋滞の激しかった目黒区大橋1丁目。国道246号線、高速3号線、県央道の結節点(ジャンクション)であり、住環境の劣悪さは城南都民にはよく認知されている。


(クレーン位置)がレジデンス・右側の壁は大橋ジャンクション

プロジェクトは大橋ジャンクションの上部を7000uの空中庭園として整備。またジャンクションの内部には多目的広場が設けられ、外壁も壁面緑化が計画されている。売主に東京都も入っているので近隣との調和も大切にされ街区のバリアフリー化、電線地中化、桜の名所目黒川の河川整備事業も盛込まれている。
また地下部分のコンクリートはFc200と海底トンネル並みの高強度コンクリートの採用で、話題を呼んだ。住宅は将来のメンテナンスを容易にするSI仕様であり、設備も環境を考慮した全熱交換機が設置(一部除く)されている。
ジャンクションが前建てになるタワーの10階までは公立図書館等公共施設、オフィス、住宅共用部や駐車・駐輪場、またスーパーが入る商業フロアー(4・5階には一部スタジオタイプ住戸あり)で、39階にはビューラウンジとエグゼクティブスイートが設けられている。


マンションギャラリー

2011年2月からJR目黒駅にマンションギヤラリーを開設。当初の1ヶ月で来場は1000組を超えたが震災で一時広告活動を停止。同GWより再度告知を行い、来場は延べ2000組に達していると言う。
来場者は大橋ジャンクションの環境は熟知しているが、利便性と売主に東京都を含む公共事業性が勝ると判断する層が来ているらしい。来場エリアは目黒区・渋谷区・世田谷区ほか都心3区より。平均年齢は42〜43歳と高めである。

最上階のプレミアム住戸を含み、申込み状況も好調。平均坪単価は東京都の指導もあり325万円に納まり、同開発エリア内にある築2年の「プリズムタワー」が中古で坪370〜380万円なので、値頃感のある価格設定も響いているようだ。

判定

都心に住む便利さと豊かさを求める層が好むマンション市場では、むしろユーザーが建設地の優位性とデメリットを熟知しており、<+>と<->のバランスで判断する傾向が強い。上記の2事例は、建物下部の大きな遊水池やジャンクションの騒音等を超える「交通利便」や「公共事業性」が勝ると判定され、集客に成功していると考えられる。
(2011年5月取材)


※このコメントは当社独自の調査によるもので多少主観が入っており、100%正確を保証するものではありません。